摂食症ともの会

みんなの 摂食症 体験談

【番外編】体験談の編さんを終えて

A×Mさん

ともの会メンバー

12名の当事者が、それぞれの言葉で語ってくれた摂食症の体験。編さんをする中で、それぞれの体験や思いを伝えることの意義を感じると同時に、言葉で表現することの難しさや限界にも直面しました。今回は、編さんを担当した2人が感じたことや、体験談の編さんにこめた思いを、対談形式でお届けします。

体験を寄せてくれた皆さまに感謝

A:これまで約1年をかけてまとめてきた体験談が、やっと形になりました!
ふたり:パチパチパチ~(拍手)
A:まずは、協力してくださった方に、この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。
ふたり:ありがとうございました。
M:けっこう大変な作業でしたね。それぞれの人生の貴重な一コマを語っていただいたのだから、当然なんだろうけど。

当事者の目線で

A:私たちにとって、これは大きなチャレンジでした。摂食症について、情報は増えているとはいえ、当事者の目線で体験がつづられた読み物は、まだそれほど多くないですよね。
M:専門家が書かれたものはよく目にするけど、当事者の書いたものは、それに比べるとはるかに少ないと思います。
A:私は過食嘔吐の渦中にいた頃、こんなおかしなことをしているのは、自分だけに違いないと思っていて、すごく孤独だったんですよね。ネット検索しても、自分と同じように悩み苦しんでいる人がいるような手がかりは得られなかったので。
M:かといって、自助グループに行く勇気も、なかなか…。その存在すら知らずでした。けっこー孤独ですよね。私も過食嘔吐が長かったけど、年代的にも、今よりだいぶ情報が限られていたと思いますし。
A:当時、何かのホームページで、当事者Aさんの体験談を見つけて読んだけど、すごくさらっと書いてあるだけで、当事者の心情や回復の道のりを詳しく書いたものではなかった。しめくくりが、「今はほとんど症状はなく、お正月に帰省した時など、時々食べ過ぎた時に嘔吐してしまうぐらい」みたいな書きぶりで、治らないのか…とすごくがっかりした記憶が。
M:わかる~。その頃はとにかく、「どうしたら過食嘔吐が止まるか知りたい」しかないから。
A:私も、過食嘔吐を止める方法しか探してなかったかも。
M:そうだと思う。私も、この症状さえなくなればと思ってた。
A:過食嘔吐がある・ないだけではなく、自分の内面も含めて変わっていく。回復は息の長い取り組みだということを、あの頃に前提として知っていれば、過食嘔吐をやめられない自分をあんなに責めたり、手放せないことに焦ったりしなくてもよかったのかもしれないと思います。
M:それに気づくまでが、私も本当に長かった。気づくっていうか、「いい意味で、あきらめることが悪いことじゃない」とか、「何者かにならなくても生きてていいんだ」とかが、少しずつ腑に落ちてきてはじめて、症状にすがらなくても大丈夫になっていった。当時は、「病気は闘って打ち勝つべきもの」みたいな感じだったから。闘い方を間違えた時間が長かったわ(笑)

なぜ今、体験談なのか

A:いろんな人の体験談が渦中にいる頃に欲しかった。だから活動を始めた当初から、体験談を編さんしたいという思いはずっとあって。
M:つらい時に何が欲しかったか。それが、「ともの会」発足の大きな動機でもありましたしね。
A:もうひとつは、ともの会のオンライントークで、たくさんの当事者の方のお話を伺うなかで、摂食障害は一人じゃないと思えることが力になった。
M:年代も経験も状況も、今の状態も違うけれど、みんな頑張って生きてる。摂食症ってどんなイメージの人を想起されるかわかんないけど、オンライントークにきてくれる人たち、とにかくステキな人ばかりじゃんって思った。
A:本当にそう。皆さんのエピソードに共感したり、内省の深さがすごいなぁと思ったり、自分とは違う視点に気づかされたりすることが、多々あって。皆さんの歩んでこられた道のりを、ぜひ文章に残して、同じ当事者の皆さんと共有したいと。
M:けっこう早い段階で、やりたいねって話になりましたもんね。オンライントークでは名言もいっぱい出て、ここに紹介しきれないのが悔しいわ~。
A:摂食症は自分だけじゃない、同じように悩み苦しんでいる人がいる。そういう経験をくぐり抜けてきた人がいる。そんな情報があればよかったと、当時も思っていたけど、オンライントークで皆さんと出会えて、さらにそう感じました。
M:症状は確かにつらい。でも、自分の本当の声を拾ってくれる人、分かち合える人がいない、そういう孤独感はさらにつらい。過食嘔吐の症状は、本当にしんどくて恥ずかしくて。拒食の時は、症状自体には悩まなかったけど、孤独感や周囲と自分は違うんだという孤立感みたいなものは、始まっていた気がする。
A:出口がみえないトンネルの中にいるようで、過食嘔吐がいつやめられるのか、とにかく不安で焦っていた。その頃の自分にそっと寄り添ってくれる、あるいはトンネルの出口に向かう道しるべになってくれるような体験談があればよかったと思って。
M:これを読んでくれた方々が、そう思ってくださる部分が、ひとつでもふたつでもあるといいですね。

表現することの意味と限界

A:体験談の編さんにあたっては、色々な葛藤がありました。一人ひとりが摂食症を発症した背景や、回復の道のりは、単純ではないし。微妙な部分をたくさん含んでいる。
M:その微妙な部分を、単純化せず表現したい、という思いもありましたよね。
A:そうなんです。とはいえ、90分のヒアリングと4000字の文字ではとうてい、表しきれない。言葉で切り出すと、どうしてもそぎ落とされてしまう部分があって。
M:正直、今でも、取りこぼしている部分が相当ありそうな気がする…。普通に人生20~30年を4000字で語るって、無理ゲーよね。
A:ですね~。だから本当に悩んで。
M:「言葉はいつも不足してるし、いつも過剰」
A:そうそう!そうですよね~。
M:信田さよ子さんの言葉。信田さんの『なぜ人は自分を責めてしまうのか(ちくま新書)』にあって、そうそうそうよって。この後に、「だから、なんか嫌だとか、なんかつらいとか、そういう感覚を大事にしていくということ」って書いてあって。編さんしてても思ったし、ずっと自分が感情を大事にできなかったし、されなかった、そのことの重さをあらためて考えたかな。
A:こうして文章でまとめてしまうと、わりと皆さん簡単に乗り越えてきたようにも見えるし、少し先をいく人のストーリーは、まぶしく見えるかもしれない。語って下さった方は、一番苦しい時期を乗り越えて過ごしてきて、ある程度、自分の経験を振り返って語れる方なんですよね。
M:時がたって、今が変われば、過去の見え方や記憶も同じではいられない。つらい中にも意味を見出そうとしたり、記憶が薄れたりすれば、やはり語りは変わるでしょうからね。
A:過去をそのままの温度で語るのは難しいかもしれない。そうはいっても、私たち自身も経験者だからこそ、自分が渦中にいてしんどい時にこれを読んだら、どんな気持ちになるか?をすごく考えた。
M:ねー。私が渦中にいた頃に読んだら、「症状はなくなるんだ」という希望とともに、「今の自分ダメじゃん」って傷ついたかもとか、けっこう話しながら進めましたもんね。
A:そもそも、つらい時にひとつの助けになってほしいという企画ですから。
M:私、サクセスストーリー読みたくないって言って(笑)
A:キラキラもサクセスもいらないと(笑)。当事者の数だけ、回復の道のりがある。しんどい時って人と比べて、あの人にはあれがあるけど、私にはない、という見方をしてしまいがち。
M:今の自分からの引き算じゃなく、足し算で。その時々の状況や心境で、良いとこどりしてほしいですね。
A:皆さんの試行錯誤の道のりを、こういうケースもあるんだなと、見ていただきたいです。
M:共感できるところも、きっとあると思うので。
A:どの方も、本当に頑張り屋さんで、まっすぐな印象。自分で努力して改善しなければとの気持ちが強いなあって。
M:だからこそ、摂食症なのかもね。とりあえず、ひとりでどうにかできる方法だから。消化できないものをどうにかしようと、自身をコントロールしようとした結果の摂食症でもあるかも。でも、体験談読むと、そういうところがそのうち、強みにもなっていくんだなって。
A:こういう人がなりやすいとか、ステレオタイプで語られがちだけど、実際は人それぞれなんだっていうのも伝わればいいな~と。
M:近い部分はあっても12人それぞれに個性がある。日本の摂食症の人が約21万人といわれる中の12人ですから。この12人がそれを代表して語っているわけではもちろんないし、どんな方々にもそれぞれのストーリーがあるはずなので、そう思って読んでくだされば嬉しいですね。

あらためて、回復とは

M:オンライントークでもよく話題になるけど、体験談を読んでみて、あらためて「回復」ってどう思います?
A:特効薬があればすごく嬉しいけれど、やはり特効薬はない。
M:残念なお知らせ?
A:回復イメージの変化について、「渦中にいる頃と、回復した現在で、回復のイメージに変化はあったか」を皆さんに聞いてみたんですが、大半の方が、「変化があった」とのお答えでした。
M:さすが。説得力ありますね。
A:回復って、単に症状がなくなることだけではないんだなと。緩やかにありのままの自分を受け入れて、適度な依存先を増やし、自分らしい生き方や幸福を再構築するプロセスのように感じました。
M:おお!なるほど~。私あんまり積極的にありのままの自分を受け入れてないかもだけど(笑)、確かに自分のことを嫌いでもないかな。適度な依存先はわかる。摂食症という唯一無二のパートナーより、愛人を複数持ったほうがいい。浮気性なほうがいいと思う。
A:愛人(笑)。うまい例えですね。摂食症の症状だけでなく、頼れる人とか、自分の好きなこととか、いろいろってことですね。
M:そうそう。
A:あと、渦中にいる時はどうしても、過食嘔吐をやめられない自分は意志が弱いとか、回復したい気持ちが足りないとか、自分を責めがち。だけど、皆さんのお話を伺っていると、「回復するぞ!」と前向きに取り組んだというよりは、もがいて、くじけそうになりつつも、何とか前に進んでいるうちに道が開けていった、という印象でした。
M:時に立ち止まったり、やり過ごしながらもありで。
A:振り返ると、摂食症があったから生き延びられた、摂食症が支えてくれたというようなお言葉もたくさん聞かれました。嫌で嫌で仕方なかった症状が、「自分には必要な存在だったのかも」と腑に落ちる瞬間が、多くの方にあるのかなと思います。

さいごに

A:この体験談が、渦中にいて苦しい人にも、そっと寄り添えるような読み物になっていれば嬉しいです。ここにふらっと立ち寄って、一人じゃないと思ってもらえたら。
M:苦しい時は良くなるって考えにくいし、ちょっと良くなっても不安になったりと気持ちは複雑なもの。でも、自分も自分を取り巻く環境も変わらないってことはあり得ない。そういう時に、今よりちょっといい方向に行くかもって期待を持てるといい。そういう場のひとつになるといいですね。
A:オンライントークも、この体験談もですが、ともの会は、渦中にいる人も、少し先をいく人も、どんな方でも「ともに」あれる場でありたいですね。
M:そうですね。
A:これから順次、体験談をアップしていきますので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです。
ふたり:編集後記。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

※掲載している方は全て仮名です。

※ここでご紹介している内容は、あくまでも個人の体験談です。症状や感じ方、回復過程には個人差があり、必ずしも全ての方にあてはまるものではないことに、ご留意ください。また、医療的・専門的な助言を代替するものではありませんので、必要に応じて医療機関や専門機関へご相談ください。

※診断名の変遷をふまえ、体験談中の表記はすべて「摂食症」に統一しています。過去に「摂食障害」と診断を受けられた方の体験についても、現在の診断名に基づき「摂食症」と記載しています。

0123456789