思い切って人に頼ってみることの大切さに気づいて

たんぽぽさん
40代女性
#拒食 #過食嘔吐
人生の半分以上を摂食症とともに生きてきた。食べて吐く行為をやめられない自分が許しがたく、恥の意識から周囲に頼ることもできなかった。夫の在宅勤務を機に過食嘔吐ができなくなり、症状が改善。今は、自分の好きなこと、やりたいことに時間を使える喜びを感じている。
運動も勉強も!頑張っている自分が好き
「ちょっと太っているかも?」と体型を意識し始めたのは、部活を始めたものの自分に合わず退部した中学1年生の途中。運動が足りないと感じてジョギングをするようになり、食事は減らすようになった。次第にやせていくことが嬉しくなって、運動と減食に拍車がかかった。運動も勉強も頑張っている自分が好きだった。自分で自分をコントロールできている充実感があったのだと思う。
中学2、3年生になると、揚げ物やお菓子、菓子パンなどの高カロリーの食べ物を一切食べなくなり、かなりやせた。細くなった自分の姿を見るのがただ嬉しかった。月経が始まる年齢にもかかわらず、16歳になっても初潮が来ないままだった。
過食嘔吐をやめられない
自分が許せなかった
拒食症から過食嘔吐へ
第一志望の高校に合格し、吹奏楽部に入部。勉強と部活に打ち込み、高校生活は楽しかった。月経は来ないままだったが、特に大きな体調の不調は感じなかったので、食事制限や自主的な運動は続けた。(結果、後にホルモン療法を受けることになったのだが。)
とはいえ、かなり食事を制限していたので、時折、欲求を抑えきれず食べすぎてしまうことがあった。そして、食べた後は罪悪感にさいなまれる。「食べたものを出さなくてはいけない。このまま吸収されたら駄目だ」という思いに駆られ、吐くことを思い付いた。これが私の過食嘔吐の始まりだった。
「こんな生活をやめたい、病気を治したい」のに…
高校時代は数カ月に1回程度だった過食嘔吐は、大学生になって本格化。第一志望の国立大学に合格したものの、大学で何を学び、自分が何をやっていくのか戸惑うばかり。周囲は優秀な人ばかりに見え、周囲とのギャップを感じ、自己肯定感は下がっていった。買い食いによる過食が増え、学校生活をこなしながらも過食嘔吐を繰り返す日々が続いた。
その後、一人暮らしを始めたことで、過食嘔吐に拍車がかかった。一日に何度も繰り返してしまう日もあり、後悔や自己否定感が募って抑うつ状態になることもあった。食料を買うためにお金を使い込んでしまい、友達にお金を借りたこともある…。「こんな生活をやめたい、病気を治したい」と思いながら、周りに打ち明けることもできなかった。
過食嘔吐が「晩酌」のような楽しみに
就職後も、仕事終わりに食料を買い込んで過食嘔吐する毎日が続いた。夜中に過食し、翌朝起きられず仕事に遅刻してしまったこともあった。
もともとがストイックな性格なので、その自分がひたすら食べて吐くという行為を繰り返すことが、許せなかった。でも、食べたいという欲求と、太りたくないという欲求を両方同時に満たす手段は過食嘔吐しかなかった。
過食嘔吐は、やめたい行動なのに、当時は仕事終わりの「晩酌」のような楽しみになっていたのも事実。これから過食しようと思って食べ物を買い込んでいるときや、過食しているときは、ある種の幸福感を感じていた。逃れがたい快楽だった。それが本当の幸福でないことは、どこかでわかっていたのに。
意志の力では…
食べたい欲求が異常だったと思う。吐くことを前提に食べていて、ゆっくり嚙みしめたり、味わったりすることはなかった。過食しているときも、吐こうとしているときも、まるで何かにとりつかれているようだった。
意志の力で止められるのは、頑張っても数日間だけ。「本気になったら止められるのでは」と思っていたけれど、「無理なんだ」ということも、段々と分かっていったように思う。
夫に隠れて過食嘔吐をする日々
29歳で結婚。夫には結婚前に摂食症であることを告白したが、事細かに話したわけではなかった。「結婚と引っ越しを機に止める」と決意したのに1週間も経たないうちに過食嘔吐を再開。それからは、罪悪感にさいなまされながらも、夫がいないときに過食嘔吐をする生活が始まった。
自分を責めながらも
できる状況があれば、ここぞとばかりに過食嘔吐をしていた。
仕事で帰りが遅い夫の帰宅前に、吐くことが日常化した。過食したい衝動に駆られ、食べた量が限度を超えてしまうとスイッチが入り、吐くことしか考えられなくなっていた。
吐こうとしている時に、夫が帰宅するなどして嘔吐ができなくなるとすごく不機嫌になって、夜の公園のトイレに行って吐いたこともあった。
夫がどこまで気づいていたのかわからず、恥ずかしくて打ち明けることもできず、こんな自分を家族に持った夫や子どもはかわいそうだと自分を責めていた。
24時間1人の生活にならないことが、
回復のきっかけ
過食嘔吐ができない環境に
そんな中でも4人の子どもを授かり、育児と仕事に奮闘しながら、相変わらず家族に見つからないように過食嘔吐する生活を続けた。
転機が訪れたのは、コロナ渦。夫が転職し在宅勤務となり、24時間ほぼ毎日夫が自宅にいる生活が始まった。当初は、過食嘔吐ができないことにかなり苛立った。夫が会食でいない夜に、ここぞとばかり過食した日もあったけれど、そのうちに、もっと食べたい欲求に火が点くことがなくなってきた。吐かなくなったことで、異常な過食への欲求が、徐々になくなっていく。少しずつ食事の量をコントロールできるようになっていった。私の場合、強制的に過食嘔吐ができない環境に置かれたことが、結果的には良かったのだと思う。
過食嘔吐にも疲れて
現在は、回復したと言っていい状態にある。2年半ほどの間で4回しか過食していない。過食嘔吐にも、もう疲れてしまった。年齢とともに、食欲も落ち、食事にそれほど関心がなくなったのもあるかもしれない。とはいえ、仕事で疲れた時などには、がむしゃらに食べたくなることも正直たまにはあるので、完治して、もう二度と症状が出ないというわけではなさそうだ。
症状からの解放
私の回復のきっかけになったのは、1人きりの時間がなくなったことだった。1日24時間そばに誰かがいる。私は人の目の前では過食嘔吐ができず、人の目が抑止になってくれた。そして、その期間が長く続くことで、過食嘔吐への依存や衝動が徐々に薄まり、回復することができた。少なくとも3カ月以上、過食嘔吐がない期間が続くことで、病状からかなり解放されるのではないかと思う。
最初は思いもよらず生活が変わって、息苦しく感じたこともあった。しかし、取りつかれていたものから徐々に解放されて、過食の衝動や、過食した後の罪悪感にさいなまれることがなくなり、食べることにも幸せを感じるようになれた。
自分の好きなことに時間を使える喜び
渦中にいる頃は、病気を積極的に治そうとする気持ちも、いつか治るイメージも湧かなかった。私にとって過食嘔吐は生活の一部で、自分の人生と切っても切り離せない部分だと認識していた。夫の在宅が始まった時も、これを機に治そうといった思いがあったわけではなく、偶然に私の行動が制限されたことで回復していったという感じだ。
そして、今、自分の時間を過食嘔吐ではなく、勉強や手芸、読書など、自分の好きなこと、やりたいことに割り当てられる喜びを味わえるようになった。
あの頃の私へ。
「思い切って人に頼ることも大切だよ」
過食嘔吐の20年を振り返ってみて
過食嘔吐の20年は本当に長かった。長い時間で失ったものは多かったと思う。
カウンセリングを受けたこともあるが、話を聞いてもらったり、相談したりすることでは、過食嘔吐はなかなか止まらなかった。話しても意味はない、治らない、と考えるようになり、カウンセリングもすぐにやめてしまった。
でも、あの時、思い切って治療に専念していたらどうだったのだろう。もちろん、20代の時に入院治療しても、予後がどうだったかはわからない。ただ、意思の力だけで治すことは私にとって難しく、症状を抱えた生活は、ずっと苦しいものだった。治療に専念することで、学生生活や仕事など社会生活が止まってしまうような抵抗感から、私は治療に踏み切れなかった。けれど、症状から解放されることで得られるものは大きかったのかもしれない。私は、過食嘔吐から解放されて20年余り経って、初めて本当の幸せを感じられた。
誰にも頼ることができなかった私へ
摂食症は、親子関係に原因があると語られることもあるけれど、私自身は、それにはあまりあてはまらないと思っている。母が私の過食嘔吐を知ったとき、「無駄なことは止めなさい」と、食べ物を粗末にすることを叱られたのは当時つらかったけれど、愛情がなかったとか、もっと甘えたかったといった思いはない。
摂食症は、つらさを理解されにくい病気だと思う。私は恥の気持ちが強くて、誰にも相談することができなかった。でも、今思えば、夫や親、姉妹などの家族、友人など相談すれば私のことを考えて話を聞いたり、サポートしてくれたりする人は常にいたと思う。私自身が恥ずかしさから自分のことを話せなかったのだ。
きちんとヘルプを求めていればこんなに長い時間、症状に苦しまずに済んだかもしれない。あの頃の自分に会えるなら、「思い切って人に頼ることも大切だよ」と声をかけてあげたい。
そして、症状に苦しんでいる方々がいる今、恥の意識に阻まれることなく治療に向かえる社会になればと、心から願っている。
※掲載している方は全て仮名です。
※ここでご紹介している内容は、あくまでも個人の体験談です。症状や感じ方、回復過程には個人差があり、必ずしも全ての方にあてはまるものではないことに、ご留意ください。また、医療的・専門的な助言を代替するものではありませんので、必要に応じて医療機関や専門機関へご相談ください。
※診断名の変遷をふまえ、体験談中の表記はすべて「摂食症」に統一しています。過去に「摂食障害」と診断を受けられた方の体験についても、現在の診断名に基づき「摂食症」と記載しています。
